第2章 はじまりの日(イケ戦プロローグとほぼ同内容)
(っ……めちゃくちゃに走ったけど、なんとか外に出られた)
振り返ると、大きなお寺が煙に巻かれて燃えている。
(夢でも見てるのかな…)
???「俺の寝入りを狙い鼠が忍び込んだか。無謀な輩がいたものだ。
護衛を全員手にかけ近づくとは…。
------…おい、女。手を離せ」
「あっ、すみません」
手を引っ込めた私を、彼はまじまじと見下ろした。
???「どうやら俺は貴様に命を拾われたらしいな。
寺の坊主と密通でもしていた遊女だろうが、礼を言ってやる」
「みっつう…?ゆうじょ……?何を言ってるんですか?」
(とっさに助けたけど……この人、ものすごく変)
偉そうな口調、冷ややかな眼差し、時代劇でしか見たことのない甲冑…。
しかも腰には日本刀らしきものまで携えている。
???「呆けた顔をするな。俺の名は知っているだろう」
「え?知りませんけど…」
???「知らずに俺を助けたのか。褒美目当てかと思ったが…。
まぁいい、知らぬなら教えてやる。俺はこれから天下統一を果たす男だ」
「いえ……別に教えてくれなくて大丈夫です」
???「は……?」
(知りたくない。なんだか嫌な予感がする……)
???「妙な女だな、貴様。俺にそのような口を聞いた
人間は初めてだ」
この上なく愉しそうな彼の笑い声が、夜の闇に響きだす。
(今、笑うところあった!? しかも笑顔が凶悪なんだけど……っ)
???「俺の興を引いたこと、命を救ったことの次に褒めてやる。
俺は安土城城主、尾張の大名………織田信長だ」
(おだ……のぶなが……?)