第2章 はじまりの日(イケ戦プロローグとほぼ同内容)
(え……?)
長身の男性がにこにこ微笑みながら、林の奥から歩み寄ってきた。
幸「勘弁して下さいよ、信玄様。この女、崖に飛び込もうとしてたんです」
「違います!ちょっと目をつぶって走っていただけで…」
幸「はぁ? なんで夜の森でそんな真似してるんだよ、お前」
「それは、現実逃避というか………」
信玄「本能寺で火の手が上がったって夜に女の子が一人歩きとは……
もののけの類いかな? にしては美人だが」
「っ……いえ、ごく普通の人間です」
色香を帯びた眼差しを向けられ口ごもると、背後から声が響いた。
謙信「よくすらすら軽薄な口説き文句が出てくるものだな」
振り返ると涼やかな目元をした端正な顔立ちの男性が呆れたようにこちらを見ている。
信玄「ただの本音だよ、謙信」
(信玄、謙信って……。まさか、この人達も………!?)
息を呑んだ時、また一人男の人が茂みの中から物音も建てずに姿を見せた。
???「謙信様、信玄様、お待たせしました。本能寺の火は消し止められたようです」
(今度は忍者?!)
謙信「偵察ご苦労だった、佐助。……信長は生き延びたのだな」
佐助「はい」
(この人達、信長様と知り合いなの?)
信玄「相変わらず悪運の強い男だ」
幸「………」
(何、この空気…。さっきまで和気あいあいって感じだったのに。
ここにいる人たちは、信長様の敵ってこと………?)
緊迫した空気のなか、口も聞けないでいると…不意に、忍者の目が私に向けられた。
佐助「……!君は………」