第30章 ひみつのよる
佐助「…………」
いつも無表情な佐助君が気まずそうな顔で小さくなっていた。
「ごめんね、佐助君。もう大丈夫だよ。」
小声で告げると佐助君はハッとしてブツブツと呟いた…
佐助「…幸にバレたら殺される……」
「?幸?どうして?」
佐助「いや、こっちの話。ところで、さっきのは豊臣秀吉だよね?」
「うん。お兄ちゃんみたいでね、色々と気にかけてくれるんだ。」
佐助「……そうか。君がここに連れてかれて心配だったけど、大丈夫そうだね。よかった。」
「うん。初めはちょっと大変だったけど、今はみんな良くしてくれるし、楽しいよ。」
佐助「……そっか。よかった。じゃあ俺はまた人が来ないうちに帰る。雨も弱くなってきたし。」
「そうだね。じゃあ……また」
佐助「また。……ドロン」
そういって佐助君は天井裏に上り、本当に姿を消してしまった。
(……すごい。もう、音もしないや。)
まるでさっきまで話していたのが夢だったかのように、部屋から佐助君の気配はすっかり消えている。
それでも、
布団にそっと触れると。
微かに感じる自分のものではない温もりが、佐助君か来てくれたことを教えてくれた。
布団に手を触れたまま、目を閉じて祈る。
(無事に2人で未来へ、帰れますように……)