• テキストサイズ

戦国のシンデレラ

第29章 未来へ


*信長目線*


秀吉に、鷹狩りをしてくると言って城を出た朝。


琵琶湖へ向かうと行ったものの行く気になれず、途中で足を止めてしまった。


---------------
*秀吉目線*

夜明け前ーーー。

秀吉「琵琶湖へ鷹狩り……? 舞の見送りはされないのですか?」


信長「あぁ。出ていく者を追う趣味は無い。」


秀吉「ですが信………!」


信長の表情を見て秀吉は何も言えなくなってしまった。いつも無表情か冷酷な笑みしか見せない主が、何かを喪ったような顔をしている。


(あぁ……お市様の時と同じ………)


秀吉「…わかり、ました………私は行ってまいります。宜しいですか?」


信長「あぁ、好きにしろ。」


----------------


あの時秀吉は何か言いかけたが、やめた。

(大方、舞を気に入っていたのにとかそういう事だろう。)


舞に会う前に城を出たのは自分のためだ。


(会ったら…引き留めてしまう。今度こそ。)


俺の人生に舞を巻き込むわけにはいかない。

何度も何度も己に言い聞かせた。





しかし足は目的の山には進まず、街の外れの丘で佇んだまま。


(もう安土を経った頃か……)


もう会えないと思えば思うほど。
会ってはいけないと思うほど。


己の足と、心は山とは逆の方向へ動いていく。


ゆっくりと、ゆっくりと進む足は


どんどん速くなり、


やがて
舞が使うであろう道へと全速で馬を走らせる。


会ってどうしたいのかもわからない。
…そもそももう通り過ぎているかもしれぬ。


だが、最後だと思えば思うほど


今まで抑えてきた感情が、


理性とは無関係に身体を進め、
理性すら蝕んでいく。


そして本心。

一度だけ、
一目見るだけでもいい。




逢いたい。


その一心で馬を走らせ、町を越え山を越え、京へ向かった。
/ 162ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp