第28章 綻び(1)
*信長様目線*
(………不味い。)
いつも飲んでいる酒が、不味い。
ここ数日……舞に帰れと言った時からずっとそうだ。
……あの時舞は大名を庇い前へ出た。
もともと斬るつもりはなかったが、勘違いしたのだろう。
それは別に良い。彼奴らしいことだ。
問題はその後だ。
舞は泣き出したと思ったら突然糸が切れたように意識を手放した。
落馬する寸前、支えた身体は恐ろしく熱かった。
舞が死ぬのではないか、その恐怖で、頭は真っ白になって。
その場で政宗と三成に全ての後処理を命じたまま安土へかけ戻った。
家康なら助けられると信じて。
安土へ戻り、家康の薬を飲んでも
舞の熱は下がらなかった。
やがて三成と政宗が戻ってきて、皆が舞の見舞いに来ているのを見て、
俺は天主に籠ることにした。
夜中だけそっと部屋に入り、
少しずつ少しずつ、舞が回復するのを見ていた。