第28章 綻び(1)
そして今宵も行くつもりだった…が、
(既に目覚めていたのか…)
おそらくあの猿が気を回し、
敢えて俺に目覚めたことを知らせず、舞の方からこちらへ来るように、大名が生きていることが伝わるようしたのだろう。
舞は気まずそうに、礼と謝罪を繰り返していた。
そして未来へ帰れと告げた時、ひどく苦しそうな顔をした。
そして何かを……おそらくここに留まるといったようなことを言おうとしたのだろう。
聞きたくなくて、無理矢理話を中断させ、追い返した。
(もし舞の口からここに残りたいなどと聞いたが最後、永遠に離せなくなる…この乱世に思い切り巻き込むことになる………)
何より………
(俺が人の温もりを…舞を望もうなど、考えてはならないことだ。)
出ていく時の舞の何か言いたげな、苦しげな表情を頭から引き離そうと、
ひたすら酒をあおった。