第26章 初陣(8)
けれどもここに残るということは
現代で自分は失踪扱いだ。
(……母と同じ。)
舞の母はちょうど四年前に失踪してそれきりだ。
あの時の悲しみや動揺を現代のみんなに感じさせてしまっているのだろうか………
(……元々祝福された子じゃない私には関係ないか。)
私には父がいない。
生まれた頃から。
母は父を知っていると言っていたが、
逢わせてはくれなかったし、
母の両親…祖母も祖父も父親は分からないと言っていた。
幼い頃に、祖母が私を指差して『父親が誰かも分からないこんな子』と母に言ったのを、
今でもはっきり憶えている。
それから、幼稚園、小学校と父がいないことを同級生に言われ続け、
中学、高校と大人になるにつれてそれは減り、友人と呼べる人とも出会えたが……
心の棘は抜けきらない。
完全に心を許せる人は、母だけだった。
けれど母はもう、いない。
母がいなくなったとわかった時も
誰ひとり私を心配してくれる人はいなかった。
心配して欲しかったわけじゃない。
でも、、、
あんたのせいよ!と叫んで私の髪を掴み、顔を殴った恐ろしい祖母の顔。
そんな祖母を宥めながらもハッキリとした軽蔑の眼差しを向けてくる祖父の顔。
それが何より私を現している。
祝福されない子。
いらない子。
誰からも…好かれない子。