第26章 初陣(8)
そして数刻後ーーー。
私は一人で馬に乗っていた。
(袴にして良かった……)
発つ時に、
信長「貴様は今日からこれに乗れ。」
と言われたのだ。
(やっぱり避けられている気がする……)
戦で気が立っているのだろうか、いつもより信長様は不機嫌なオーラを漂わせている。
私は、信長様の真後ろで馬を走らせながら声をかけた。
「あの……」
信長「なんだ。」
声はとても冷たく、昨晩の無邪気な様子などは欠片も見当たらない。
結局、それ以上声をかけることを躊躇われて
私は、何でもないです、
とだけ言って話を終わらせた。
(そもそも話しかけてる場合じゃなかった……)
現代に帰れ、と言われたが私にはまだやるべき事がある。
(幸村達との戦を止めたい………)
それに、私にはもう一つ考えていることがあった。
『このままここに残っても夢を叶えることは可能なのではないか』
今の針子の仕事はとてもやりがいがあって楽しいことには変わりないが、和服限定だ。
けれど、この間安土のみんなに作った羽織や、たまに政宗から頼まれる袴など。
意匠を凝らして作れる作品はいくらでもある。
(洋服は諦めなければいけないけど、ね。)
けれどもーーー。