第25章 初陣(7)
*三成目線*
(舞様はあの後どうされたんだろう……)
昨晩の事を考えながら信長様の天幕を通りかかった時、ちょうど考えていた人が現れた。
(………!)
何故、舞様が信長様の天幕から出てくるのだろうか?
「あ…おはよう、三成くん。もしかして私、寝坊しちゃった?」
まだ少し眠そうに、そして申し訳なさそうに舞様が言う。
三成「………。………いえ、大丈夫ですよ。」
思わず思考を忘れ、慌てて答える。
「……?三成くんどうしたの?」
態度がおかしくなってしまったのだろうか。
心配そうに尋ねられ、どうにか微笑んで答える。
三成「………昨晩は、信長様の所でお休みになったのですね。」
「え?……あ。」
「昨日、囲碁の勝負をしたまま寝ちゃったみたいで…悪いことしちゃったな……」
確かに、昨晩は静かだったし、舞様のご様子からも情事の後の雰囲気は感じられない。
(しかし、同じ天幕で一晩明かすというのは……)
どうしようもなく胸が騒ぐ。舞様と信長様は恋仲なのだろうか…?
三成「…そうだったんですか。もしかして信長様と美夜様は恋仲なのでは、と兵達が噂していましたよ。」
(本当は、私がそう思っているだけですけどね。)
少し、嘘をついてかまをかけてみる。
「えぇっ!?私と信長様が恋仲なんてある訳ないのに!」
ある訳ない、と真っ向から否定され驚く。信長様が舞様を想っていることは分かりきっているのに、恋仲ではない、ということはどういうことなのだろうか。
三成「そうなのですか?美夜様は信長様のご寵愛を受けてらっしゃるのでは…」
確認でさりげなくもう一度聞いてみる。
「違うよ!信長様は私をからかって遊んでいるだけだもの。」
(あぁ…舞様は気づいてらっしゃらないのですね。)
その言葉で、信長様と舞様が恋仲ではないとようやく確信し、安心する。
三成「……そうですか。では朝餉になったらお呼びしますので美夜様は今一度天幕にお戻りください。」
朝とはいえまだ兵達も少数しか起きていない。もう少し休んでもらおう。
そう思い舞様を天幕へ促した。