第23章 初陣(5)*三成目線*
舞様を帰らせる、と言った信長様の言葉が脳内でこだまする。
『私が勝ったら……舞様が信長様のものだというお話を撤回してください!』
元はと言えば、舞様が囲碁で負ける度信長様に好きにされているのをこれ以上見たくなくて挑んだ勝負だ。
それは舞様が嫌がっているからという訳ではなく…もちろんそれもあるが……自分のためだった。
そもそも最近は安土に来たばかりの頃よく見ていた舞様の本気の抵抗というものを見ていないから、私にはもう何もわからない。
あれだけそばに置こうとしていた舞様を何故、突然返すと言ったのかもわからない。
(結局私は…舞様にあさましくも恋心を抱き、その気持ちのままにこのように先走って……。)
改めて、信長様には勝てないと、思ってしまう。
武将としても、男としても。
(舞様が安土へ来た経緯を知っていながら、故郷へ返してあげるという発想がありませんでした…無条件にここに居ると思っていたのです……)
……舞様は信長様腕に身を預け、安心しきったように眠っている。
(これが、答えですよね………)
ガツンと頭を殴られたような衝撃と悲しさと、悔しさで頭がいっぱいになってとても囲碁どころではない。
(完敗、ですね………)
ーーーーパチリ。
考えているうちに、さんざん粘っていた勝負はあっけなく負けてしまった。