第22章 初陣(4)*信長目線*
*信長目線*
ふと左腕に妙な重みを感じ、気づく。
(こやつ、寝おったか…)
静かになったと思っていたら、どうやら寝落ちたらしい。
思わず碁石を遊ばせていた右手をその細い髪に伸ばそうとしたが、その手は結局身体の真ん中当たりで止まる。
(今は、三成がいるんだったな)
しかしその手の動きで三成の目線がつられたらしく、驚いた顔で三成はこちらを見ている。
三成「………」
石を打つことを忘れ舞を見つめるその目には確かに熱がこもっていて、あぁ、こやつもか、と思う。
(三成、貴様も、舞のそばを求めるか。)
同じ武将でも圧倒的に自分より業もケガレも少ない三成に僅かな羨望が一瞬浮かびそうになって…
自らそれを消す。
その時ふと思う。三成は舞がもうすぐ元の場所…五百年後の日ノ本へ帰ることを知っているのか、と。
信長「………三成、貴様は勝負に勝ったとして、舞をどうするつもりだ。……元の場所へ返すのか?」
すやすやと自分の腕に身を預け眠る舞を起こさないよう、小声で尋ねる。
三成「……え?それはどういう……舞様を彼女の故郷へ返す、という意味ですか?」
その返事と動揺で確信した。舞は三成に言っていない、と。
もっとも、三成と舞が初めて出会った時、俺と三成は舞からその話を聞いてはいるのだが。
(あの時は俺はもちろん三成も信じていなかったからな……しかしあれから舞は三成に言っていないのか。)
なんとなく、気分が浮つく。
優越感、なのだろうか。
(………たかが女一人でこうも気分が浮つくものか。)