第19章 初陣(1)
目を輝かせているとそれを見ていた政宗が笑った。
政宗「ほら、気持ちいいだろ?」
「悔しいけど確かに……」
信長「この俺が走らせる馬に乗って早駆けしているのだ。気持ち良くない筈がない。」
「別にそれは関係ない気が………」
信長「ほう…じゃあ交代するか?貴様は確か馬に乗れると言っていたな。」
ニヤリと振り返った信長様が手綱を私に手渡そうとしてくる。
(流石に信長様を乗せて走る自信はないよ……!)
「すっ、すみません!!気持ちいいです!」
信長「良し。」
そう言って信長様はついでとばかりに私の指を甘噛みする。
「ぁっ……な、なんてことするんですか!」
奇しくもそれは左手薬指で、甘い痛みが指先から身体の奥にじんわりと広がっていく。
信長「俺のものに触れて何が悪い。」
「~~~っ!!」
意思と反して熱くなる身体と滲む涙に戸惑いながら
仕返しに髪の毛で信長様の耳とうなじを撫でた。
信長「っ!貴様、何をする!!」
初めて聞く焦りを含んだ声と真っ赤な顔に気を良くして信長様に意地悪を言ってみる。
「安土城の主ともあろう方なのに、くすぐられると弱いんですね!」
信長「それとこれとは関係ない!貴様、次やったら斬るぞ!」
涙目になった信長様に私は初めて可愛いという感情を抱いた。
そんな姿を遠くから寂しげに眺めるひとりの男がいた。
三成「………」
前方を見ていられず俯きその光景について考える。
何よりも引っかかるのは舞の手に甘噛みした信長様とそれを怒る舞だ。
(まるで恋仲のよう…確かにお似合いですね……)
囲碁の勝負で負け、耳と手、脚を奪われたと言っていた。
………そのうち心まで奪われてしまうのではないかという不安が胸をよぎる。
(それは、嫌ですね…)
三成「………」
何かを決意したように三成は再び前方を見据えた。