第19章 初陣(1)
舞達が明日に備え眠りについた頃。
…一人の男が安土の城下町から出、
明日、信長達が戦をする予定の場所に程近い山へと入っていった。
男「報告致します。信長は予定通り明日、出陣するそうです。」
その男は山奥深くのみすぼらしい小屋へ入るなり膝をつき報告を始めた。
報告を受けた男ーーー顕如の顔には大きな傷跡がありその目には深い哀しみと憎悪が刻まれており、彼の纏う法衣はボロボロだ。
顕如「ご苦労だった。大名も無事にけしかけることに成功した。今の所全て上手くいっている。………これで少しは今まで散っていった同胞(はらから)達の償いになるだろう。」
顕如は深い皺を顔に刻み今はもうない本願寺やその同胞達を思い出す。
男「それで、妙な噂を耳にしたのです………どうやら信長が女を連れていくらしい、と。」
顕如「女だと?戦にか。」
男「はい。織田家ゆかりの姫君らしく…」
顕如「信長の寵姫か。折角だ、女には悪いがありがたく利用させて貰おう……諜報ご苦労だった。明日も早い、少し休め。」
男「はっ。」
男が下がり一人になると……
顕如「………さてどうしようか。」
そう言って顕如は小屋から見える月を仰ぎ薄く笑った。