第16章 初陣 〜前日譚〜
政宗「いい目をしてんじゃねえか。一切の迷いがない。嫌いじゃないぜ。そういうの。」
そう言って政宗が笑う。
秀吉「舞は信長様から離れるなよ。…本陣に攻め込まれる前に終わらせる。」
三成「では私は今一度作戦を練り直します。…さらに効率よく手早く終わらせるためにも。」
………………
………
……
会議が終わって、部屋に戻るとすぐに人がやってきた。
家康「…舞。入るよ。」
家康さんは部屋に入ってきて、ずいっと私に一冊の本を渡した。
「えっと……?」
「……どうせあんた何も出来ないし。せめてこれ、読んだら。」
どうやら戦場での傷の応急処置などの仕方が書かれた本のようだ。
「……っ。わざわざありがとうございます、家康さん。」
家康「……っ。別に、弱いあんたでも一応行くには役立ってもらわないと困ると思ったから。…………あと、家康でいい。その変な敬語もやめて。」
「でも、家康さ…」
家康「家康。」
きっぱり言われて戸惑いながら言う。
「…いえ、やす……」
家康「うん、それでいい。」
家康さ…家康はふっと笑った。
ここに来て初めて笑顔を見せてくれた。
「……っ」
柔らかな微笑みについ見惚れていると、
「じゃあ、そういうことだから。ま、せいぜい頑張って。」
そう言って家康はすぐ出ていってしまった。
(はじてて笑顔をみせてくれた……)
少しは打ち解けられたのだろうか。
私の決意で周りとの関係は
こんなにも変わっていく。
覚悟を決めて初めて、私はこの乱世をちゃんと受け入れられたのかもしれない。
そう思った。