第6章 きっかけは・・・
休憩時間はもう少しだけある。
梨央ちゃんを体育館裏まで連れてくると、そこでやっと彼女の手を離した。
「どうしたの?何か怒ってる?」
「怒って…はねぇけど、心配してる」
「何を?」
「夜久はチビッこいし女みてぇな顔してるけどさ、男だよ?あいつに狙われてるかも、とか思わねぇの?」
「ええ?思わないよー。だって、私だよ?狙ったって面白くも何ともないじゃない」
どういう根拠だよ!
梨央ちゃんだから心配なのに。
「あのなぁ…梨央ちゃんは影で結構モテてんの!自覚しろよな」
呆れ半分にため息をつけば、目の前の頬が赤く染まっていく。
「や…嘘だよ、そんなの」
「嘘じゃねぇし。鈍感なセンパイ」
「ムッ!じゃあ、てっちゃんは気づいてる?」
「何を?」
「てっちゃんだってモテてること」
「何それ?んなわけねーだろ」
「同じクラスの女の子たち、騒いでたもん。『背高いしイケメンだし、一年生なのにバレー部ではレギュラーだし、スペック高い』って」
「……」
「ちょっと腹が立った」
「え?」
「てっちゃんのいい所は、スペックとかそういうんじゃないのに。そんな理由でキャーキャー騒がないでよって…思っちゃった…」
拗ねたようにムスッとして、地面を睨む梨央ちゃん。
だめだ……。
俺、ヤベェ顔になってる…。
咄嗟に手の平で顔を半分隠した。
普通に褒められるより、よっぽど嬉しいんだけど。
それに、なんつーか、ちょっとヤキモチ入ってね?
夜久への苛立ちなんて、ソッコーでどっかにすっ飛んでった。