第6章 きっかけは・・・
「俺のいい所はさ…。他の女に知って欲しいとか思わねぇから。梨央ちゃんだけが知っててくれたら、それでいい」
……頑張った、俺!
でも、こんな言い方じゃ梨央ちゃんには伝わらねぇんだろうな。
何も言ってくれない梨央ちゃんの顔を覗く。
すると、その顔はさっきの比ではないほど赤くなっていた。
「ちょっ!顔!大丈夫!?」
「な…っ、言い方!デリカシー!」
「いや、そうかもしんねぇけど!だってそんな反応予想外だろ!」
「てっちゃんがタラシ発言するから!」
「それは!梨央ちゃんにだけだし!」
「~~~!……またそんなこと言って…!」
慌てふためいた会話がいくつか飛び交うも、それはピタリと止む。
そして少しの沈黙の後、梨央ちゃんは上擦った声を出した。
「鈍感って言われた上、これが勘違いだったら居たたまれないんだけど…。私、そんなこと言われたら自惚れちゃう…」
「……いいよ、自惚れて」
「え?」
「今日部活終わったら、駅前のカフェ、付き合ってくれる?」
「……」
「本当のカップルとして」
「……はい」
何だかんだ言って、結局こうなれたきっかけは夜久のおかげか?
誰もいないのをいいことに梨央ちゃんの手にそっと触れる。
温かな体温は、すぐに俺の手を握り返してきた。
恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうに俺を見上げてくる梨央ちゃん。
その笑顔を目にした途端。
今日だけはもっくんに、「ありがとう」って素直に言えそうな気がした。
【 end 】