第6章 きっかけは・・・
俺は今、目の前の光景に苛立っている。
四月に入部したバレー部には、マネージャーとして梨央ちゃんがいる。
それもあって、日々の練習は気合いも入るし、登下校も一緒にできて楽しい。
でも……。
「ねぇ、もっくん。駅前にできたカフェ知ってる?」
「ああ、何かカップルで行くとサービスあるらしいですよ」
「え。そうなの?」
「男女ならいいみたいっすね」
何で梨央ちゃんと夜久が仲良くお喋りしてるワケ?
そんで、"もっくん"てナニ?
シ○ガキ隊かよ。
「梨央さん、彼氏と行けばいいじゃないっすか」
「いやいや、私彼氏いないしなぁ…」
「だったら、俺と行きます?」
「いいの?もっくん彼女は…」
「いたら誘いませんって」
「そっか。じゃあ、」
「ちょーっと待った!!」
突如話を割った俺の声に、二人は振り返る。
「なあに?てっちゃん」
「あのさ、二人いつの間に仲良くなったワケ?」
「は?前から普通に喋りますよね?」
「うん」
不思議そうな顔で俺を見る、梨央ちゃんと夜久。
「あと"もっくん"て何?」
「え?"もりすけくん"だから、"もっくん"だよ」
それはわかってんだよ!
何でそんな親しげに呼ぶ仲になってんだ?ってとこを聞きたいんですけど!
「あ、てっちゃんも"てつくん"のがいい?」
それもアリかな……って、そういうことじゃなくて!
「カップルとか聞こえたんだけど」
「うん」
「夜久とカップルに見られるってことだろ?それ。いいの?」
「…!」
梨央ちゃんはそこでやっと、ハッとした表情をする。
「そっか…ごめんね、もっくん迷惑だよね?」
……。
ハァ!?そうじゃねーだろ!
何でそんな鈍感なんだよ。
「俺は全然迷惑とかじゃ、」
「とにかく!付き合ってない男女がそんなとこ行っちゃいけません!この話はなかったってことで!」
強引に梨央ちゃんの手を引いてその場を離れる。
セーフ…!
俺は夜久の魔の手から、梨央ちゃんを救い出すことに成功した。