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パラレル・ショコラ【ハイキュー‼】

第7章 ラブレター




「何か落ちたけど」


「や、待っ、見ないで…!!」


落とした紙を拾い上げる、彼の手。
それを奪おうと慌てて腕を伸ばす。

けれど……




「……これ、俺に…?」



落とした紙というのは封筒。
表には、間違いなく私の字で "赤葦さんへ" と宛名が。
どう考えてみても、私の身の回りに別の "赤葦さん" は存在しない。


つまり、誤魔化しようがない…。




「…そぅ…です…」


囁くみたいに小さな声しか出てこない。
こんな心の準備も何にもない状態で、赤葦さんの手にラブレターが渡ってしまうなんて。

もう、私のバカ…。
皺にならないようにと思って、辞書の間に挟んでおいたのがいけなかった…。


赤葦さんは封筒の宛名にジッと視線を落としたあと、今度は私を見つめた。


「読んでいい?」


「はい!?ムリ!ムリです!そういうのは本人のいないところで読んでくださいよ!」


あまり表情豊かではない赤葦さん。
見た目から察するのは難しいものの、どうやらふざけているわけではなさそう。



「漢字、ちゃんと書けてるね」

「え?」

「赤葦の"葦"の字。汐里、漢字苦手なのに」

「そりゃあ…赤葦さんの名前なんだから、ちゃんと覚えてますよ…」




はっ…!


何か意味深に言っちゃった…!


どさくさに紛れて、恥ずかしい…!!




顔に熱が集まるのを自覚していると、赤葦さんの大きな手が頭を撫でていく。



「これ、家でゆっくり読むね」


「……はい」


「じゃあ、次の問題だけど…」


何事もなかったかのように、勉強に戻る赤葦さん。



私の脳裏には、雪絵さんの言葉が響いていた。





『話には続きがあってね?
赤葦、"そういうものは受け取らないことにしてる"って言って断ってたの。ケチだよね~?読んであげるくらいしてもいいのにぃ』







………。




これは…

どういうこと…?


ラブレターは、間違いなく赤葦さんのバッグの中にしまわれていた。





えっと…


えっと…、うーんと…?



赤葦さんの気持ちを読み取ることは、今の私ではきっとどんな問題よりも難解だ。



「汐里。また手止まってる」


難問を押し付けた張本人の顔は、今度は確実に悪戯っぽく微笑んだ。




【 end 】


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