第1章 rain of lust
「・・・・・・」
「おまえ・・・やっぱりモテるんだな」
「っ・・・こんなの・・モテるなんて、・・・言わないでしょ・・。それよりなんで此処に・・・」
「そうか?相手は持ち帰りたそうに鼻の下伸ばしてたじゃねえか」
「変なこと言・・・!・・あ・・・・」
「あーあー・・勿体ねえな・・・・、零れちまって。・・・来いよ、いくらでも飲ませてやる。喉渇いてたんだろう?」
「ッ・・・・あの・・」
「オレがよく使う駅だ。前にも話しただろう・・・ベッドの中で・・。まあ、ベッドの中の会話なら、覚えてなくても仕方ねえか・・・フッ」
「・・・・っ・・・」
数分経ってからのことだった。
変わらず居るのは同じ場所。
すぐ近くに地下鉄への階段が見えているのに、状況が移らないまま時は進む。
名無しに声をかけていた男は手首の痛みに瞬時的に嗚咽し、面倒そうな別の男が現れたことによって簡単に去って行った。
男同様、面倒そう・・・ナッシュのことをそうやって名無しが今でも思っていることは、出会った当初から変わらない印象だ。
まあ、自分の女だ、とでも言いたげにその場を制せば、男も多少なり不憫ではあったのだろうが、同情の余地もあったものじゃあなかった。