第1章 別れ
***
「ハア、ハア、ハア…」
ユーリと母は山の中を走っていた。元々、ユーリ達の住んでいた場所は山の中だった。
そんな二人の目に信じられないものが飛び込んできた。
二人が目を見開く。
「な…」
「かあさん…。あのおっきいのって…」
巨人がいた。
「…ひっ」
巨人と目があう。ユーリは恐怖に震えた。
「ここって…、『壁』の中なんじゃないの?『壁』の中には、こいつは…居ないんじゃないの?」
ユーリは思ったことをブツブツと呟く。
巨人が二人に手を伸ばす。ユーリは恐怖のあまり動けない。
だが、母は動いた。ユーリをつかみ、遠くに投げ飛ばした。
「うあっ!!」
落ちた衝撃で声が漏れる。だが、痛みに悶える暇などなかった。