第1章 その半生
「なにすんのよ、危ないじゃない!」
こんちゃんは口を尖らせて怒っている。ついでにいじめっ子を成敗してやりたいようで、次に言うべき言葉を模索している。
だが乱暴ないじめっ子はそんな事は意に介さず、こんちゃんに個性を使わせようと大きな声をあげた。
「るっせーんだよ、何でテメーは個性見せねーんだよ早くやれよっ!」
これは騒ぎの中でも先生に聞こえたようで、声がかけられた。
「はいはいこらこらやめなさーい」
しかし子供達は全く意に介していない。
「なによなによ、爆豪君はお手軽個性でも、えーっとその、私は違うの!そんなホイホイできませんっ!」
的確な言葉がパッと出てこないあたりは子供らしいが、言いたいことは言えたようで満足げだ。
しかし、こんちゃんは満足しても口喧嘩相手は憤慨している。
「何だよ、自分の個性すら操れねーザコかよオマエ。はっ、だっっせ!そんなすげー個性、オマエにはもったいねーんじゃねーの?」
これにはこんちゃんもカチンと来た。
「私にしかできませーん残念でしたね!ほら見てなさいッ!」
幼稚園のあの事件以来発動していなかったために、痛みがある事を忘れており、なんの躊躇もなくガラッと窓を開け教室脇の木から葉を捥ぎ、頭頂部に乗せる。
その音に驚いた児童達は少し静かになった。しかしまだざわざわと騒ぎは収まらない。先生はより声を大きくして子供の鎮静にかかる。
一方こんちゃんはというと、練習なんて一度もしていないのだから一生懸命力むがなかなか変化が無い。
「ハッ、やっぱクソザコじゃねーかよその葉っぱどーすんだよ?」
いじめっ子がガタッと席を立ち、こんちゃんに近づいた。
そして葉っぱをぶん取ろうとしたその瞬間、運悪くも彼女は発動に成功した。
すうっと葉っぱが消えてしまい、いじめっ子は目を見開き半歩下がる。
瞬く間に毛が生え、骨の形が変わり出した。
「ゔゔゔゔあゔぅぅゔ」
地面に伏してしまったこんちゃんは白目を剥いて顔を歪め、獣のような唸り声をあげてとても苦しそうだ。
「あ"あ"ぁあぁぁあ"あっ」
この声に子供達も驚き、騒ぎが静まり始め、
「ぎゃああぁああああああぁあ!」
またも響く悲痛な叫びに完全に静かになった。それにより、漸く教師が2人に気がついた。