第1章 その半生
騒いでいるうちに、こんちゃんの見た目が変わりだした。
まず全身が毛に覆われ、髪が縮み出す。
あまりの痛みに地面に爪を立て、掻き乱すその様はまるで、
「ぁ"あぁ"ああぁあ"ッッ!」
まるで怪物。
「え、え、ねえせんせえ、
怖いよっっ!」
勇気ある少年すら逃げ出した。
そう。手脚が狐のそれに変わり始めてなおヒトの原型を留めているその姿は、恐ろしいモンスターにしか見えないのだ。
「あああっ、どうしよう!」
そのおどろおどろしい見た目に、こんな時こそしっかりせねばならないはずの先生すら後ずさりをしていた。
「きゅうぅうーーーーん!」
一際甲高く痛ましい悲鳴の後、ようやく変身が終わったこんちゃんは小さな狐に化けていた。
まだ痛みがあるようで、地面に体を擦り付けている。
「ふうう、山は越えたようね…」
ほっと胸を撫で下ろす先生。
だがしかし、彼女はもっと恐ろしい現実を見ていなかった。
「ふああーん」「うえぇえー」「ママぁ〜〜」
庭を見渡す限り、阿鼻叫喚の地獄絵図ならぬ泣く園児達。
他の先生も出てきててんやわんや。
彼女は監督不届きによる大事件を、新学期そうそうに起こさせてしまったのだった。
この出来事は、園児達に強烈なインパクトを与えるとともに大きなトラウマも植え付けてしまったという。
以降、こんちゃんに対し怯える子供が多発したのは言うまでもない。
お気付きの方も多いでしょうが、これが私の幼稚園時代。
なかなか鮮烈なデビューを飾ったものですね。
私の個性は骨格から変わるものなので、どこかが縮むもしくは伸びる際にとんでもない痛みが発生するんです。
毛が生えるにしても針で刺されるような痛み、内臓が変化しても穴が空いたかのような痛み。
他にも様々なパターンに合わせて、多種多様な痛みが全身同時発生するのでもう地獄です。
ああ、あまり思い出したくないものですね。
厄介な個性に恵まれた。