第1章 優しい人 (あんずside)
「嬢ちゃんや…
よく来てくれたのう…♪ 歓迎するぞい♪」
軽音部の部室に入った途端に、言われた言葉。
あの朔間先輩が、起きて棺桶の上に座っている。
…そうか、今は放課後だから、
少し元気なのかな。
「あんずちゃんがいるって聞いて、来ちゃったんだ♪
今日はよろしくね♪」
苦手な羽風先輩ももう既に部屋にいた。
来ちゃったってなんだろう…?
自分のユニットの活動日だから来るべきじゃ…
「羽風…先輩はよう、
いつも練習にこないし、女とデートしてばっかのスケコマシ野郎だからな。」
よく理解出来てない私に、
こっそり大神くんが教えてくれた。
「あんずにあまり近づかないで欲しい、羽風先輩。」
アドニスくんが私の前に出て、羽風先輩に言った。
…と同時に後ろから覆い被さるように、温もりを感じた。
一瞬、思考が停止してしまった。
でも近くにいるのは、前に出たアドニスくんと、
もう1人はーーーー
「え〜… それは困っちゃうなぁ
あんずちゃんの為に今日来たわけだし?
プロデューサーと話でもしないと何も出来ないから、
今日の所は見逃してくれないかなぁ…。」
「くくく…
嬢ちゃんは愛されているのじゃのう。
お遊びはこれくらいにして、プロデューサーのお手並み拝見といこうかえ?」
朔間先輩がニヤニヤしながら、
こちらを見て笑っている。
「大神くん…」
声を振り絞って言ったつもりだった。
本当に近くにいないと、聞こえないくらいに。
それでも大神くんは、聞こえたらしく、
勢いよく、バッと私を離して、
「悪かったな…」
って私にだけ聞こえる声で呟いた。
大神くんはアドニスくん同様、私を守ってくれた…?
もやもやしているうちに、UNDEADのプロデュースが始まった。