第1章 優しい人 (あんずside)
ーーーどれ位経っただろうか、
晃牙くんは私の家の前に着いて、
私を下ろしてくれた。
そして、私のバックも渡してくれた。
あれ? あまり濡れてない…?
と、不思議に思いながらも、
「あんずはすぐ、風呂入れよ。
冷えてるからな…」
そう言って私の両肩に晃牙くんの手がのっかった。
その手はとても冷たく、
私よりも晃牙くんの方が、
身体を冷やしているのが分かった。
「じゃあな…」
そう言って晃牙くんは
また豪雨の中に突っ込んで行く、
「待って! 泊まっていってもいいんだよ?」
「言っただろ。
俺様は1人暮らしでレオンが待っているから、
早く帰ってあげねぇとなぁ…」
「せめて、傘とか貸すから、待って!!!」
私は自分の中で
1番大きい声を出したつもりだった。
でも晃牙くんはもういなかった。
暗闇でどこにいるか分からなかった。
私は1人残された気持ちになり、
私に掛けっぱなしの
晃牙くんのブレザーからまだ伝わってくる温もりを感じつつ、
そんなに濡れていない自分のバックを持って、
家の中に入った。
晃牙くん… 本当にありがとうーーーーー