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1匹狼な君と

第1章 優しい人 (あんずside)


「チッ… もう降ってきやがった…
おい大丈夫か? 急ぐぞ」


雨の音にかき消されないように、
大きな声で私に伝えてくれた。


速く帰らなきゃ…
そう思った矢先、滑って転んでしまった。

手を繋いでいたから、
晃牙くんはすぐに気がついてくれた。

でも、私は、
暗すぎる夜道と、痛いほどの雨で
足がすくんで、その場から動けなかった。


「あんず!!大丈夫… じゃ…ねぇな…」

晃牙くんが焦ったような困ったような声色だ。
ごめんね、本当にごめんね。
自分が情けなくて涙が出そう…

すると、何かに覆いかぶさった感じがして、
痛みが和らいだ。
強い雨だが、少しだけ晃牙くんのニオイがする。


「おら!!あんず!!早く乗れ!!」


そう言って目の前には晃牙くんの背中が、
すぐに言われた通り背中に乗る。
私は軽々持ち上がり、
晃牙くんは私をおんぶしながら走り出した。
こんな雨だというのに
晃牙くんの背中がとても乾いていた。
そして、晃牙くんの温もりをとても直に感じる…

もしかして…
晃牙くんは自分のブレザーを脱いで、
私にかけた…?

雨は降り続けゴロゴロという音もする中、
私は晃牙くんの温もりに包まれて、
暗闇の中を駆け抜けていった。
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