第1章 優しい人 (あんずside)
「分かったから、少し待ってろ。
すぐに戻るからな。」
そう言って大神くんはどこかに行ってしまった。
私が突然きたから、嫌で逃げ出した…?
でも、前は 相手してやってもいい って…
言ってた気がするんだけど…
言った通りすぐに大神くんは教室に戻ってきた。
ゆったりと大股で歩きながら入ってきた。
手には袋をぶら下げていて、
購買で買ったであろうパンが入っていた。
この速さで購買まで行って帰ってきたの…?
速すぎない?
「ほら、一緒にメシ食うんだろ。
なら、早く食べようぜ。」
自分の席に座った大神くんはそう言って、コロッケパンを食べ始めた。
私も持ってきたお弁当を広げて食べ始めた。
「声も小せぇのに、一口も小せぇんだな。」
ちょっとだけ、笑いながら大神くんは言った。
周りが男の子だらけだから、そう思うだけだよー
言いたいけど、言えなくて、
なんか可笑しい気がして、
自然に笑っていた。
「……だから、…
その顔は反則だろ…」
小さい声で大神くんは言った。
私には聞こえてないと思っているようで、
でも、
顔は赤くなってたし、
全然こっちを見てくれない、
目が全く合わない。
私はこのもどかしさをなんとかしたくて、
大神くんから目をそらしてしまった。