第1章 眠れるリング
「ありがとう…。私は大丈夫だよ。
ご飯食べに行こうか!私、お腹空いちゃった」
みづきが二人に笑顔を向ける。
ティーガとサイは、自然に、
レストランのテラスで笑顔で笑い合うリド達が見えないように
みづきを囲う。
『よし、俺がみづきにメチャクチャ美味いもん食わしてやる!』
大きな声でそう言うと、みづきの肩を抱いて歩き出す。
サイは最後にチラッとリドの方へ目をやると、
テラスから驚いたようにこちらを見ているリドと目があったが、
すぐに逸らして、ティーガとは反対側のみづきの手をそっと握った。
食事中、みづきはずっと喋っていた。
目の前の料理の話、さっきの映画の話も、今までの宝石の国での想い出…
その話はいつもティーガとサイ、トトリやジーク、キースの事ばかり。
無意識にリドの話をしない様にしているようだった。
ティーガもサイも、気づいていたが、あえて何も言わない。
ただ、笑顔でみづきの話に耳を傾ける。
でも、サイはこのままではいけない…と思っていた。
(僕は知ってる…。
このままだと、みづきが壊れちゃう…)
辛い事に蓋をして、無理やり笑っている。
泣きたいのに、喚きたいのに、全部おさえこんで、
今自分の目の前で明るく笑顔を見せるみづきを
心の底から心配していた。
(後でちゃんと話しないとね…。
でも今はもう少し、忘れさせてあげたいな)
昼ごはんを終えた三人は場所をかえてお茶を飲んでいた。
今度はずっとティーガが喋っている。
「ふふふ…ティーガ君は、本当に面白いね。
私、宝石の国に来れて良かったな」
みづきが微笑みながら素直な気持ちを言う。
『やだなぁ、そんな居なくなっちゃうみたいな言い方しないでよ。
これからも、沢山面白い事作っていかないとね』
サイもニコニコしながら言う。
でも、心のうちは、妙なざわめきがあった。
みづきが居なくなってしまうような不安が襲う。
それは、どうやらティーガも感じ取ったようだった。
『そうだぞ、みづき。俺たちとずっと一緒にいれば、
つまらない日なんて一日もないぜ?
そうだ、今日はサイもみづきも、ガルティナに泊まっていけよ!』
「もう。ティーガ君はこれから会議があるでしょ?」