第1章 眠れるリング
夕方の会議にはくれぐれも遅れないように、と
執事から念を押されていたティーガを思い出す。
『僕も、今日はトトリとアルマリがサフィニアで演劇を観るらしくて、
夜はうちの城で食事会する事になってるから無理だよ』
困ったような表情でティーガを見るサイ。
「私も、今日の夜は用事があるから…」
『そうか、仕方ねぇな。
じゃあ、また明日だな!』
ティーガがニカッと笑って言う。
サイは、そに言葉に、
みづきの顔が一瞬曇ったのを見逃さなかった。
『ねぇ、みづき。
早く終わったら、みづきもおいでよ。
きっと、トトリさんたちもみづきに会いたいと思うから』
サイが微笑みかける。
『あ、ずっりーぞ!みづきが行くなら俺も行く!』
ティーガが割り込んでくる。
「でも…。リドが…いないのに、
宝石の国の王子様の食事会に私だけが行くのは…」
みづきは、リドを見かけた時から、初めてその名前を口にする。
『たまたま、そうなっただけで、別に王子の食事会じゃないよ。
友達同士って事だったら、問題ないでしょ?』
サイが優しく話しかけた。
『そうだぞ。今だって友達三人が集まってるだけだろ?』
ティーガがウインクしながら言う。
「わかった。行けそうだったら、連絡入れてもらうから…」
『連絡なんていらない。みづきの分も用意して待ってるから、
そのままきて?ね?』
サイの言い方は珍しく少し余裕がなく聞こえた。
それもそのはず。何故か、もうみづきには会えなくなってしまうような
嫌な胸騒ぎがずっと止まらない。
みづきは、サイの言葉にただ微笑みながら頷いた。
会議のあるティーガと、食事会の準備があるサイを見送ると、
みづきは一人残ると言い、街を歩いていた。
(ごめんね、サイ、ティーガ君…
今日のムーンロードで行かないと、離れられなくなる…)
ふと空を見上げれば、陽は傾き、
あと2時間もすれば月夜を連れてくる。
リドの事をふと思い出す。
(女の子に、あんな顔するんだな。リド。
王子様だもんね…。)
スマートな手つきで馬車からエスコートし、
地上に立てば腰に手を回す。
そして、いつもとは違う笑顔で、和かに話していた。
《おい!危ないっ!避けろ!!おい!聞こえてるかっ!》
「えっ?!」