第1章 眠れるリング
「リド!おはよう!」
みづきが笑顔で駆けてくる。
それだけで昨日までとは全く違う朝だ。
「おはよう。よく寝れたか?」
リドは久しぶりに穏やかな気持ちの朝を迎えていた。
「あれ?ティーガくんとサイさんは?」
「あー。なんか、気を利かせてくれたみたい…」
目元を赤く染めながら、目をそらすリドの言葉に、
みづきも意味を理解して赤くなる。
「そっか…
ねぇ、リド朝ごはん食べた?」
「ん?まだだけど?」
「よかった。さっき、サイさんの執事さんがこれ持たせてくれたの」
そういうと、バスケットを持ち上げて見せる。
「リド、私のわがまま聞いてくれる?」
「ん?なんだよ」
「お昼寝の木のとこでご飯食べたい」
そう言って笑うみづきは朝日のように輝いていた。
「あはは!そんなの我儘でもなんでもねーじゃんか。行くぞ!」
そう言ってみづきのバスケットを奪い、手を引く。
街を抜けて行く途中で知った顔が前にみえた。
『リド王子!今日はお姫様とデートですかー!』
「誰?」
「宝石屋の親父…」
人の良さそうな顔で近づいてくると、
宝石屋の主人はすぐさまみづきのピンキーリングに気づく。
『お、さっそくプレゼントなさったんですね!
もうすっかり王子とお妃様ですね』
「お、お妃様?!」
「お、おい!」
『あれ?言ってないんですか?ペリドットの意味を…むぐっ』
リドは慌てて主人の口を塞ぐ。
「それはまだ。ちゃんと言うから、今は黙ってろ!」
「リド!おじさん苦しそうだから!」
その言葉にようやく手を離す。
『はぁはぁ…全く、そう言う所は子供みたいなんですから…。
そうですね、ちゃんと自分の口から言わないとですからね!お幸せに!』
そう言うと、リドの背中をバンっと叩き笑いながら去っていった。
「いって…」
「大丈夫?」
「ティーガに続いて2回目なんだけど…」
その様子にみづきはつい笑ってしまう。
「笑い事じゃねーぞ、ったく。
あー、指輪の意味は…待ってろよ」
みづきは笑顔でリドの頬にキスをする。
「お前っ!着いたら仕返しするからな!」
朝の街に二人の笑い声が響いていた。
眠れるリング 終