第1章 眠れるリング
「リド…!」
「やっと、思い出したのかよ…」
驚きと、不満と、喜びが入り混じって、
リドの頭の中はぐちゃぐちゃだった。
その感情を伝えるために、涙を流し続けるみづきの身体を
思いっきり抱きしめた。
「リド、私…私…
リドの事忘れてるなんて…」
「いいから。もういいから。
俺が悪いんだ。俺の事忘れたくなったのも、全部俺のせいだ」
リドは抱きしめながら、恐る恐る聞いてみる。
「みづき…なんで事故にあったか、覚えてる?」
今まで思い出そうともしなかった、事故の日のこと。
次から次へとフラッシュバックしていく映像に、
耐えきれず崩れ落ちる。
「いやぁぁぁ」
「大丈夫か!」
リドが慌ててその身体を支えると、ゆっくりとベットへ座らせた。
「大丈夫?」
もう一度心配そうにリドがみづきを覗き込んだ。
頭を抱えて悶えているみづきの背中をそっとさすりながら、
みづきが落ち着くまでリドは待っていた。
どのくらい立っただろうか。
取り乱したみづきはだいぶ落ち着き、
リドが差し出した紅茶を受け取った。
「あり…がとう…」
かすれる声を絞り出すみづきの乱れた髪の毛を
リドは優しく撫でて直していく。
「ごめんな…俺のせいで、お前をこんなことに…。
事故にあったと聞いて、心臓が止まるかと思った…」
「ううん。事故にあったのは、私がぼーっとしていたせい…」
「でも、それも俺のせいだろ…
ごめん、ちゃんと話しておかなくて。
ティーガにも物凄く怒られたんだ…」
「ティーガくんに?」
「あぁ…サイにも、兄貴にも…」
「そっか…」
「お前は…怒らないのかよ…」
その言葉に、みづきはそっと頭をふる。
「まだリドの理由を聞いてないから、怒らないよ」
「みづき…」
リドはみづきの手をギュッと握ると、
「全部聞いてくれるか…」
と訊く。
みづきはただ静かに頷いた。