第1章 眠れるリング
「みづき!」
リドは、急に意識を失ったみづきの身体を揺さぶる。
『リド様、大丈夫です。また直ぐに目を覚まされるでしょう』
医師は、そっとリドの肩を持ってみづきから離す。
『ただ、今のご様子では、記憶が混乱している様ですね。
あまり、思い出す事を強制しないであげてください。
今のみづき様は、皆様の事を知らない人だと思われている様ですから』
その言葉に、その場の全員が息を飲む。
先ほどの反応を見て、薄々感じていた事を、
いざはっきり言われると思考がついていかない。
特にリドは、一番恐れていた事だっただけに、
その場に膝から崩れ落ちた。
『おい、しっかりしろよリド!』
ティーガとサイは両脇から抱えるようにして、
リドを椅子に座らせた。
「大丈夫?リド。
きっと思い出すよ。今は目覚めたばかりだから、ゆっくり回復させてあげよう」
サイが心配そうにリドを覗き込む。
「あぁ…でも、もしずっと思い出さなかったら…」
その力無い声に、少し怒った様なナビの声が重なる。
『姫様は大丈夫です!この世界を救う光です。
姫様はこの様な事で、倒れるお方ではありません』
そう言うと、リドに近づき、フワフワの手をリドの手に乗せる。
『だから、リド王子。あなたが一番信じていてあげてください。
それが、みづき様の1番の力になるはずです』
そう言うとニッコリ微笑んだ。
「そう…だな。ごめん。
俺は絶対諦めないから。あいつを幸せにするって約束したから…」
その言葉を聞くと、ナビだけでなく、
ティーガもサイもその場にいるみんながホッとする。
「それでは、私たちは帰りましょうか。
また様子を見に来ますから。目を覚ましたなら一安心ですからね」
トトリがそう言うと、渋るアルマリとトルマリを引きづり部屋を出て行った。