第1章 眠れるリング
沢山の人がこちらを見て驚いた顔をしている。
誰かを呼んでいるみたい…誰なんだろう?
でも、そこには声がしたはずの、お兄ちゃんがいない。
知らない人ばっかり…
抱きついてくる金髪の女の子と、半べそで誰かを呼ぶ金髪の男の子。
優しそうなお兄さんに、穏やかそうな青い髪の男の子。
一番親しげに話しかけてくる赤い髪の人が二人…
昔一緒にいたぬいぐるみのような動物が、お兄ちゃんとそっくりの声を出す。
そして、手を握りじっと見つめている緑の髪の…
みんな知らない…でも、みんな自分を知ってるみたい…
なんで?凄く怖い…私だけ知らないの?
混乱して黙っていると、白衣を着た男性が近づいてくる。
脈を取ったり、体温を計ったりしている。
そして、その人は私に訊いた。
『ご自分の名前、言えますか?』
そんな事当たり前じゃない…自分の名前だもの。
えっと…ええっと…
私の名前?私の名前は…
「わか…り…ません…」
答えたら酷いが頭痛がする…
思い出したいのに、思い出せない。
私、忘れてるの、名前だけ?
何か…大切な事を忘れてる気がする。
あまりの頭痛に、私は再び意識を手放した。