第1章 眠れるリング
「サイ…」
リドは、朝早くにサフィニアに訪れた。
『リド、おはよう』
「あ、あぁ…おはよう。みづきは…」
サイは、ゆっくり顔を横にふる。
「そっか…」
『中、入りなよ。きっとティーガも来ると思うから』
サイに促されて、リドはみづきのベットに近寄った。
昨日と変わらず、スヤスヤと眠っているように見える。
包帯が無ければ、怪我をした事さえわからないかもしれない。
サイと向かい合ってベットの脇に座ると、
布団の中からみづきの手を取り出し握る。
「みづき…ごめんな。約束守れなくて…」
『約束?』
リドの言葉にサイが疑問を投げかけた。
リドは、みづきの手を握っている手を片方離すと、
首元で光る緑色の石に触れる。
「みづきの笑顔は俺が作るって約束したのにな…」
そう言うと、リドは力無い笑顔をサイに向けた。
『そっか。それ、リドから貰ったって、凄くはしゃいでたもんね。
目覚めたら、ちゃんと謝りなよ?』
サイは、落ち込んでいるリドを元気付けようと、
優しい笑顔を向ける。
だが、リドは
〈目覚めたら〉
という言葉に胸がツキンと痛む。
「目覚めなかったら…」
それ以上先の言葉は出てこなかった。
『リド!リドが信じてあげなくて、どうするの?』
さっきまでの笑みを消したサイが、リドを叱責するように言う。
「そうだよな。ごめん。
みづきみたいに、目覚めさせる力持ってたらな」
リドはネックレスから手を離すと、
そっとみづきの頬を手の甲で撫でた。
『よーぉ!お前ら!ティーガ様が来てやったぞ!』
ドアが勢いよく開くと、
沢山の荷物を抱えたティーガが騒がしく入って来る。
『おはよう。ティーガ。どうしたの?これ』
サイが、荷物を落としそうになっているティーガを助けながら声をかける。
『みづきが好きなもの、いっぱい持って来たんだ。
どうせ、リドも飯食ってねぇだろ?』
そう言うと、食べ物や、ぬいぐるみなど、色々なものテーブルに並べて行く。
『好きな物が側にあった方が、早く目が醒めるかもしれないだろ?
それに、俺らが元気ないと、目覚めた時にみづきが心配するしな!』
ティーガは二人に向かって、ニカッと笑って見せた。