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夢100 今宵夢で逢いましょう

第1章 眠れるリング


「そう。僕とリドの目が合う前から。
あの時、リドからは見えなかっただろうけど、
みづきは泣いてたんだ。何でみづきに言っておかなかったの?今日の事」

サイの言い方は静かだったけれど、言葉は怒りを堪えているように聞こえた。

『せめて、俺たちには言えば良かっただろ。
それとも、言えないほど本気のデートしてたのかよ!』

ティーガは怒りを露わにして言う。

「そんなわけ、ないだろ…。言ったら…傷つくと思って…」
リドの言葉には最早力はなかった。

『それで、余計傷つけたんだ…』
後ろからアルマリが涙声で言う。

「それが、何でこうなった…」

リドは寝ているみづきから一度も目を離さずに訊く。

「僕は、トトリさん達と約束があって、ティーガは夕方の会議があったんだ。
みづきは、城にはまだ帰りたくないって、リドには今会いたくないって、
気持ち落ち着かせるために買い物でもして帰るっていったんだ」

サイが、別れ際の様子を詳しく話し出す。

『事故を見てた街の奴に聞いたら、
みづきは、空見上げながら元気なく歩いてたって。
そこに、暴走した馬車が突っ込んで、大声で退くように叫んだけど、
聞こえてないみたいだったって…』

ティーガは、事故の状況を伝えに来た警察官からの話しを伝える。

「僕たちも、みづきを一人にしたのは間違いだった。
それは認めるよ。ごめん」

サイは、拳を固く握りながら、後悔の念を伝えた。

「それで…みづきはどういう…」

リドは恐々と、容態を訊く。
すると、後ろから診察を終えた医師がゆったりとした声で話し出した。

『みづき様は、命に関わるお怪我はされてません。
ですが、頭を打った事で、未だ目は覚まされておらず…
もしかしたら…目が覚めても記憶の障害が残る可能性があります』

「いつ目覚めるかわからないって…」

『えぇ。明日かもしれませんし、一週間後、一ヶ月後、
もしかしたらそれ以上とも言えません。
念のため、明日、病院からもう少し設備を揃えさせますが…』

それを聞くと、リドは初めてみづきの近くまで歩みを進める。
頭には包帯が巻かれ、眠るように閉じた瞼を見ると、
気づかないうちに涙が一粒落ちた。

「ちゃんと言わなくて…ごめんな…」

そう言うと、そっと頬に口づけをした。



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