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夢100 今宵夢で逢いましょう

第1章 眠れるリング


食事も、デザートが終わり、二人は珈琲に差し掛かる。

(やっと終わる…早くみづきの顔が見たいな…
昨日ちゃんと話せなかったし…謝らないと…)

リドはそっとポケットに忍ばせている物に触れる。
姫が、立ち寄りたいと言った宝石店で待ちぼうけを食っている時に見つけた、
可愛らしいピンキーリングをこっそり買っていた。

お揃いのブレスレットにも、プレゼントしたネックレスにも、
そして今日見つけた指輪にも、綺麗なペリドットがあしらわれている。

(喜んで…くれるかな)

楽しみよりも不安が大きかった。
もう、一日以上ちゃんと話せないでいる上に、
昼間のティーガとサイと歩くみづきの姿が目に浮かんでくる。


『少し失礼しますね』

リドがみづきの事を考えていると、ふいに目の前で声がかかり、
姫が席を立った。

それを見ると、リドは大きなため息を吐く。

「はぁ…やっと終わるよ」

『リド様』

気を抜いた瞬間に声を掛けられて、跳ね上がる。

「え?」

振り向くと、レストランの支配人が立っていた。

「何だよ、驚かせるなよ…」

不機嫌なリドの声に恐縮しながらも、

『すみません。お声掛けするタイミングが中々見つけられずに、
今になってしまいました。実は、リド様達が入られてすぐに、
サフィニアの従者さんから言伝が入りまして、これをお渡しするようにと…』

「サイから?何だよ、珍しい…」

リドは、小さなメモ紙を支配人から受け取る。
ずっと一緒にいる友達だが、今までにこんな事が無かったので、
何か胸騒ぎを感じながら、折りたたまれた白い紙を見る。
コース料理を頼んでいたから、かれこれ3時間以上はここに居るだろうか。

「急ぎだったのか?」

畳まれた紙を無造作に開くと、見慣れたサイの文字が其処にはあったが、
慌てたような筆跡で書かれていた事もあり、
その内容は一回ではリドの頭には入ってこなかった。

「どういう事だ?」

もう一度、ゆっくり読み返す。

〈みづきが街で事故にあった。
意識がないのでサフィニアの城で医者に見せているから、
とにかく直ぐに来て〉

何度か繰り返し目で追う。
そして、背後にいる支配人に掴みかかり、

「なんで直ぐに渡さなかった!!
馬車にいる執事を呼べ!」

と、人目も憚らずに怒鳴った。
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