第1章 眠れるリング
サフィニアの劇場で観劇を済ませたアルマリとトトリが、
城に着くのと同時に、会議を終えて馬を飛ばして来たティーガが戻ってくる。
「ティーガじゃないですか。そんなに乱暴に馬を走らせて、
どうしたのです?」
トトリが不思議そうにティーガに話しかける。
『何かあったの?なんかお城が騒ついてるけど…』
アルマリも、いつもと違うサフィニアの城の様子を感じ取っていた。
ティーガは、今までの自分が知る範囲の事を二人に教える。
「なんだって?それでみづきの容態は?!」
トトリが珍しく余裕のない声を出せば、
『兎に角みづきのとこに行こう!』
アルマリは今にも泣きそうな顔でティーガを促した。
『容態の詳しいことは、サイしかわからない。急ぐぞ』
そう言うと、三人で城に入っていく。
サイの執事がみづきが寝かされている部屋まで案内をしてくれた。
『サイ!みづきは?!』
ベットの傍らで、みづきの手を握りながら座っているサイに、
ティーガは駆け寄って行く。
トトリとアルマリも、驚いた表情のまま側に近寄って行く。
「目に見える怪我では、命に関わらないって。ただ…」
『何だよ、大丈夫じゃないのかよ?』
ティーガは苛立ちを隠さずにサイに詰め寄った。
「頭を打ってるみたいなんだ。検査はしてもらって、大丈夫だったんだけど、
そのせいで、いつ目覚めるかがわからないって…。
目覚めても…記憶がしっかりしてるかわからないみたい…」
サイの言葉は、力があまり無く、最後は消え入るように小さくなった。
『なんで?みづきに何があったの?どうして…』
アルマリが、半分泣きながらサイとティーガを見る。
『今日はリドはいないのですか?』
トトリは冷静に、いつもいるはずのリドの所在を確かめた。
「リドは…」
サイが答えようとすると、
『リドのせいだろ!だいたい!
あいつ…絶対に許さないからな…。
もしが目覚めなかったら、殴ったくらいじゃ済まないから!』
興奮しているティーガをサイが少し厳しい声でなだめる。
「今それを言っても仕方ないでしょ。
リドは、後で問いただす」
二人の話がわからないトトリとアルマリは、
困ったようにサイとティーガのやり取りを見ていた。