第1章 マカロンにまつわるエトセトラ/東峰旭
薄い水色のドレスシャツに、ラインの入った紺碧色のカーディガン、紺色のダウンジャケットにブルージーンズという東峰の出で立ちは確かに店頭のマネキンが着てそうな組み合わせにも思えた。
「身長高いし、ガタイもいいから様になってる。うらやましいなぁ」
「そ、そうかな?そんなに褒められるとちょっと恥ずかしいかな……の私服も、か、可愛いと思う」
「……あ、ありがと」
自分が褒めるのは微塵も恥ずかしさを感じないのに、自分が褒められる側になると、とたんに恥ずかしさがこみあげてくるのは何故なのだろうかとは思った。
2人してもじもじしながら照れ笑いをしている姿を澤村や菅原が見たら、確実に鋭いツッコミが入っていたところだろう。
「あ、い、行こっか!明日ホワイトデーだし、お店混んでるかも」
の言葉に東峰は頷いて、くるりと踵を返して店へと向かい出したの後を追った。
わき目もふらず急ぎ足で店へ向うの髪の毛がふわふわと上下に揺れる。
ゆるく毛先が巻かれているのに気付いて、も女の子なんだなぁと東峰は妙に感心してしまう。
大股で歩いての隣に並んだ時に、ふわりと揺れたの髪から漂ってきた甘い香りが東峰の鼻腔をくすぐった。
今まで部活漬けの毎日で、男だらけで過ごすことの多かった東峰にとっては、こんな些細な出来事でも心を揺らすのに十分な出来事だった。
学校にいる時とはまた違う雰囲気のの姿に、東峰の心臓は刻むリズムを徐々に早くしていった。
「わー…もう結構並んじゃってるね」
の足が止まって、東峰は彼女の視線の先を追う。
パステルカラーの可愛らしい外観の店の前には入店の順番を待つ人の姿がずらりと並んでいた。
はちらりと横の東峰を見やった。
この店をお勧めした手前、この行列に並ぶのはやぶさかではないが、当の東峰は苦ではないだろうか。
本人に確かめるべく、は東峰に問いかけた。
「東峰、並ぶの嫌じゃない?他のお店探す?」
「俺は構わないよ。こそ、しんどくない?付き合わせちゃってごめんな」
「待つのには慣れてるから平気だよ。じゃあ、並ぼうか」
「うん」