第16章 愛の言葉を聞かせて/天童覚
同じ場所にいたはずの俺達は年を経るごとに、お互いが少しずつ違う場所に足を踏み入れていって。
互いの姿が見えなくなることもあって、不安に駆られることもある。
だけど、それでも俺達の根っこは変わってない。
目の前できょとんとした顔で俺を見上げる彼女は、どんなに距離が離れても変わらない。
──それでも、私は覚くんのこと大好きだから!──
空港で見送ってくれたあの日、キミはそう叫んだ。
あの時からキミの気持ちは変わることなかったんだ。
疑って、ごめん。
積み重なる現実に負けそうになって、ごめん。
「……愛してる、ちゃん」
抱きしめたちゃんは、きっとまた真っ赤な顔をしているに違いない。
─fin─