第3章 Let me share the love with u.
「あ、青根、さん…?!だよな、影山」
「…じゃないのか、多分。あんなデカい人そうそういないだろ…」
日向と影山が動揺したのも無理は無かった。
日向達が青根であろうと視認した人物は異様な出で立ちだったのだ。
真っ黒なライダースジャケットに、真っ黒なインナー、またまた真っ黒なパンツにブーツ、そして極めつけはターミネーターがつけていそうな大振りのサングラス。
そこにいたのは日向達の知っているあの青根高伸ではなかった。
どう見てもターミネーターにしか見えない、大男だった。
そしてその大男は肩に大きなラジカセを担いでゆっくりと日向達のいる方へ歩いてきている。
妙な迫力に、烏野メンバーのみならず学園祭に来ていた他の人達も、思わず後ずさった。
周囲のそんな反応をよそに、大男はゆっくりと歩み続ける。
「あれ?この曲、なんか聞いたことない?」
「…そう言われれば」
始めのうちは青根の見た目に気を取られていた人々も、次第に耳慣れた音楽が流れていることに気が付きだした。
烏野の面々も、その曲を聞いて頭の中にあるお菓子が浮かんできていた。
「もしかして、ポッ」
東峰が言いかけたその時、どこからともなく現れた黒服姿の二口がスッと青根の前に躍り出る。
続けて黄金川が、小原が、吹上が…皆黒服に身を包んで登場して、歩き踊りつつ、列をなしていく。
大柄な選手の多い伊達工バレー部が集まっただけあって、その眺めはなかなか壮観なものになった。
それに加えて二口の厳しい指導のおかげで息の合ったダンスは、素人のそれとはいえ、見ごたえがあった。
特徴的な曲の間奏部分が流れ出すと、周囲の人々の盛り上がりも最高潮に達した。
黄金川の擬音を借りるとすれば『ドゥン!ドゥン!ドゥンドゥドゥ!ドゥッドゥッドゥッドゥッドゥードゥー』のところである。
CMでなんとなく目にした程度でも、曲に合わせて踊りだす人も出てきた。
二人のマネージャーも華を添えて、一回目のフラッシュモブ風出し物は成功に終わった。
踊り終えた二口達は、自分達と同じように黒の集団を見つけて、それが烏野だと認識すると「ゲッ」とした顔になった。
青根だけはいつもと変わらないでいたが。
「茂庭さん、なんで烏野呼んでるんすか」
「えっ、いや、折角だし見てもらおうと思って」
「練習試合は午後でしょ?何も午前中から呼び出さなくても…」