第3章 Let me share the love with u.
―伊達工祭当日―
「うっひょー!すっげぇ、模擬店がいっぱいある!」
「おい日向あんまりキョロキョロすんな」
「わっ、ツッキーあれ見て!動く恐竜!」
「山口うるさい。言われなくても見れば分かるし」
「ごめん、ツッキー!ツッキー恐竜好きだから、つい」
伊達工の校内に、黒いジャージの集団がいた。
伊達工バレー部員達と何かと因縁のある烏野高校バレー部の面々だ。
「お前ら、頼むから騒ぎは起こすなよ」
「迷子にもなるなよー」
「迷子って…子供じゃないんだから…」
「旭は他人をビビらすなよ」
「え…何それ…」
烏野の一年だけでなく、二年三年も顔を揃えてぞろぞろと伊達工の校内を練り歩いていた。
「おーい!」
そんな黒いカラスのような集団に、手を振りながら近づいてくる者がいた。
声に気が付いた菅原がそちらに目を向けると、茂庭がこちらに駆け寄ってきている。
「来てくれてありがとうな、烏野のみんな」
「いや、こちらこそ招いてもらってありがとう」
ついこの間ネットを挟んでにらみ合っていた茂庭と澤村の二人はどちらからともなく頭を下げて挨拶を交わす。
そんな様子を見守る烏野メンバーだったが、日向だけが相変わらずキョロキョロと周囲を見回していた。
「ちょっとは落ち着け、翔陽」
「あ、はい」
西谷に言われて日向はぴたっと動きを止めた。
けれどやはり目だけは周囲をキョロキョロと見回し続けていた。
そんな日向の姿を見て、茂庭は日向に向けて優しい笑みを浮かべた。
「青根達か?多分そろそろ出てくると思うんだけど……」
「?」
「あれ、旭聞いてなかった?伊達工バレー部、とっておきの出し物するらしいよ」
「はは、あんまりハードル上げるとあいつら可哀想だけどな」
そう言いつつもわざわざ学園祭に招待するくらいなのだから、茂庭の中で自信があるのだろう、と澤村や菅原は思った。
今日招待されたのは実はその出し物だけが理由ではなかったものの、折角だから見てやってほしいと茂庭に懇願されたのだ。
その出し物の詳細については当日のお楽しみということで、烏野メンバーの期待は否が応にも高まっていた。
♪~♪~
どこからともなく流れてきた音楽に、皆の意識は自然と音の元を探ることにシフトしていった。
次第に大きくなり近づいてくる音の元に一番に気が付いたのは日向だった。
「!!?」