第15章 スモーキー・ブルース/烏養繋心
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さんが家に来るようになってから、3週間が過ぎた。
週に2~3日ほど家に来ては、畑の仕事やら店の仕事を手伝ってくれる。
その間も俺は一応付き合う気はないと何度か口にしたものの、さんは最初の頃と変わらずいくら言ってもへこたれる様子はなく、むしろ「私のこと、好きにしてみせますから!」と彼女に意気込ませてしまうばかりだった。
しかしさんの事ばかりに気をとられるわけにもいかなかった。
烏野バレー部のやつらの、成長には目を見張るものがあって。
猫又先生に煽られてのせられた気がしていたが、もしかしたら本当にコイツらなら、大舞台にいってくれるんじゃねぇかって、そんな希望が見えてきていた頃だった。
だから、彼女のことは放置していい問題ではなかったものの、彼女の優しさに甘えてズルズルと付き合いもせず、かといって拒絶もせずの態度をとってしまっていた。
そんなある日の部活終わり。
その日は練習相手として、烏野高校バレー部OBをメインとした烏野町内会チームを呼んでいた。
「おい、今日この後飲みに行かないか?」
「おっ、いいな! 行こうぜ! な、繋心!」
嶋田の誘いに、すぐに滝ノ上が反応を返す。
大体こいつらが集まると飲み会になるのはお決まりのパターンだ。
「そーだな、行くか。行成、お前も行くだろ?」
「えっ…俺また飲まされるんすか?!」
俺が声をかけた森行成は、町内会チームでも最年少。
飲みに行くたび大体滝ノ上や内沢さんが飲ませるもんだから、最近は飲み会と聞くとビビってしまうようだ。
仕方ないから、たまには助け舟を出してやるか。
「今日は、ほれ、ハンドルキーパー任すから」
「あっ、それだったら行きます!」
俺の言葉にホッとしたのか、現金な返事がかえってきた。
「つってお前タダ飯食う気だろ」
「バレました?」
「ったく今時の若いもんわ」
「俺と嶋田さん達そんな年変わんないでしょうよ」
あはは、と盛り上がる嶋田達から離れ、携帯片手に体育館の外に出る。
お疲れさまでした、と声をかけて部室へ戻る部員達に軽く手を振って、意識を携帯の方に集中させた。
ワンコール、ツーコール。
スリーコール目で、『はい、もしもし』と声が聞こえた。