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ハイキュー!! まとめ

第15章 スモーキー・ブルース/烏養繋心



吐息がかかりそうなほど近づいて、彼女に囁いた。

「弄ぶだけ弄んで捨てるかもしれねぇぞ」

彼女を下に見るように、視線を落とすと、若干彼女の顔がこわばった。
と思ったのもつかの間、さんはパァッと何か閃いたといった顔になった。

「…なるほど! 既成事実ってやつですね!」
「は……?」
「そうか、その手があったか……」
「いや、おい……」

しまった。
おかしなことをふきこんでしまった。
怯えさせるどころか、逆に変な知恵をつけさせてしまった。
うろたえる俺に、さんはニッコリと微笑みを向けた。

「冗談ですよ!」
「……だと、いいが……」

結局、俺は車内で彼女を説得することは出来ず、後は終始無言でそのまま家まで送っていった。

「ここです。ありがとうございます」

彼女の家は、昔ながらの日本家屋で、立派な門構えだ。
庭もあるのだろう。
これまた立派な松の木が植わっているのが見える。

…莫大な財産って話は、あながち嘘じゃないのかもしれない。
思わずそんなことを考えてしまうほどの家に、ますます彼女に対して謎が深まるばかりだった。

けれどそんな立派な家には明かりが付いていない。
家の前に車を停めても、中から人が出てくる気配もない。

「あー…一応、親御さんに一言……」
「両親は、いないんです」
「どっか出かけてんのか」
「いえ…私が小さい頃に、事故で亡くなってて」

マジか。
今の今までそんなこと一言も聞いてない。
知らずに踏み抜いてしまった地雷に、思わず頭を掻く。

「…そうなのか。悪い」
「いいえ! 大丈夫です。小さすぎて私はよく覚えていないんで。…今日は送ってくださってありがとうございました」

ぺこりと頭を下げるさんに、ひらひらと手を振る。

「ん……戸締りちゃんとしとけよ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ」

バックミラーを見ると、さんは俺の車の行方を家の前でずっと見つめていた。
角を曲がるまで、彼女の姿はミラーの中にあった。

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