第14章 離れてもすきなひと/黄金川貫至
恋人同士で盛り上がるイベントのひとつであるクリスマスはとうに過ぎてしまった。
目前に迫っているのは、クリスマスの次の大きなイベント、バレンタイン。
もう付き合っているから、今更チョコが欲しいとかそういう欲は黄金川には無かった。
しかし、世の中がチョコと同じく甘いムードで染まる中、遠距離の彼女を持つ黄金川は、彼女に会いたくてたまらないのだった。
「会いたいなぁ……」
呟いた黄金川の言葉は、耳から流れる騒々しい笑い声にかき消される。
画面の中では楽しそうに笑う人々の顔。
歌が終わってしまえば興味の持てない映像に、黄金川の瞼は次第に重たくなっていった。
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「うわっ?!」
いきなり耳元で目覚ましのアラームが大音量で鳴った。
驚いて飛び起きると、耳に何かが引っかかってスポンと抜けた。
痛みに耳をさすりながらベッドの上を見ると、白いコードがくにゃりと伸びている。
「あー……耳痛ぇ……」
どうやら昨日、イヤホンをしたまま寝落ちしてしまったらしい。
抜け落ちたイヤホンから微かに、アラームの音が聞こえる。
アラームを止めて、俺はゆっくりベッドから起き上がった。
着替えを終えてスマホを手にすると、画面にメッセージの表示が見えた。
「えっ! 電話きてた?!」
メッセージは、電話の着信を告げるもので、その相手は世界で一番大好きで今会いたくて仕方ないさんだった。
着信の時間も確認せずに、俺はすぐにさんに電話をかけていた。
何度か呼び出しの音が鳴って、もしもし、と眠たそうなさんの声がした。
「さん?! スンマセン、俺、昨日電話気づかなくてっ」
『あー……貫至くん? おはよ……』
「おはようございます!!」
『……ふふ……貫至くん、今日も元気だね。貫至くんのモーニングコールですっかり目が覚めちゃった』
あっ、もしかしてさんまだ寝ていたかったんだろうか。それか今寝たところだったかもしれない。
時間を見もせずに電話をかけてしまったことを後悔した。
俺とさんの生活リズムはずれていることが多い。
朝練で早起きの俺と、夜遅くまで仕事をしているさんとでは、寝起きのタイミングが違う。