第13章 恋の始まりはすれ違いから/茂庭要
……告白が成功したら、なんて考えるとまた胸が痛んだけど、目の前で泣いてるさんが幸せになるなら、それでいいって、思った。
「……本当に?」
「うん……素直に、気持ちを伝えてみなよ。……さんの好きなやつなら、きっと、チョコが無くても気持ちを受け取ってくれると思う」
彼女が想うような相手なら、きっといいやつに違いないから。
……やっぱり確証なんて何もないんだけど。
俺の言葉に、さんは何事か考えこみ始めた。
涙はいつの間にか、止まっていた。
「……好き、です。私の気持ち、受け取ってくれますか?」
潤んだ瞳で見つめられたら、たまらなかった。
こんな告白を受けない男がいるだろうか。
この世のどこかに、彼女にこんな愛の告白をされるやつがいるのかと思うと、遠くから何か投げつけてやりたい気分になった。
「うん……率直でいいと思う。…誰に言うのか知らないけど、成功するように祈ってる」
「……え……?」
さんの表情が、先ほどまでとうって変わって、キョトンとした表情になった。
あれ?
俺なんか変なこと言ったかな?
上から目線すぎた???
「あー…すみません」
コホンと咳ばらいをひとつして、滑津が「差し出がましいようですが」と口を挟んだ。
「茂庭先輩、さんは先輩に言ってるんですよ」
「……は? 俺?」
滑津の指摘に頭が真っ白になる。
困惑しつつも、さんの顔を見ると、彼女もこくりと頷いた。
「え、ええーっ?! お、俺?!?」
思わず大きな声で驚いてしまった俺に、滑津が呆れた顔でため息をついた。
「いや、気付くでしょう普通……。だって、さん必死に茂庭先輩のこと呼んでたでしょ? あの様子で分かりません?」
さっきの光景を思い出してみれば、確かに滑津の言う通りだ。
さんは俺を大声で呼び止めていたし、俺の元に駆けて来ようとしていた。
あれ。
じゃあ。
さんの好きなやつって……
「俺?!?」
自分を指さして聞くと、さんは深く頷いてくれた。