第2章 栗より甘い、/青根高伸
驚いた顔のを引き寄せ、もう一度柔らかな唇の感触を確かめた。
先ほどより少し長く、彼女の唇の熱を感じる。
そっと彼女を解放すると、今までに見たことがないくらい顔が真っ赤になっていた。
「あっ、お、ちょっ、待って……!」
「……柔らかかった…」
「!!」
もっと気持ちを出そうと思って、思ったことを口にしてみたけれど、には「そういうことは言わないの」と言われてしまった。
素直に口にするだけではダメなようだ。
……なんとも、難しい……。
「でも…嬉しかった。ありがとう、青根くん…」
顔を真っ赤にさせてそう言うがとても可愛く思えて、仕方ない。
「俺も、嬉しかった。」
「!!」
何かが爆発したみたいにが叫んで、の顔がさらに赤くなった。
「えっと、先に進みたいって言っといて勝手なんだけど……青根くん、ゆっくりでいいから…じゃないと私の心臓がもたない…」
「……?分かった。がそう言うのなら」
「!!」
「……??」
返事をしただけなのに、は何故か恥ずかしそうにしている。
女心というものは、本当に難しいものだ。
「青根くん…、もしかして、無意識…?」
「……?」
「名前、下の名前で呼んでくれてるの、無意識?」
「……!」
言われて、自分が彼女のことをではなくと呼んでいたことに気付く。
指摘された通り無意識だった。
意識した途端、自分がとてつもなく恥ずかしいことをしたような気がして、顔が熱くなった。
「あ…やだ、私、野暮なこと聞いた…ごめん!」
「……(ふるふるふる)」
今まで、お互い苗字で呼び合っていて、二口にも「いつになったら名前で呼ぶんだよ」なんてやかましく言われていたのに、こんなに突然名前を呼ぶ日がくるなんて思ってもみなかった。
いつかその可愛い名前を口にしたいとは思っていたものの、いざ口にしてみると気恥ずかしさの方が勝ってしまう。
「…私もさ、高伸くんって呼んでもいい?」
「……!!」
ふいに呼ばれた自分の名に、かぁっと全身が熱くなるのが分かった。
家族以外に呼ばれたことのない、自分の名前。
それが大好きなの口から紡がれるのだから、嬉しくないはずがない。