第2章 栗より甘い、/青根高伸
体が自然に動いていた。
考えるより先に、俺の腕はの小さな体をすっぽり包んで、ぎゅっと抱きしめていた。
「あお、ねくん…」
「…すまなかった。気持ちに、気が付いてやれなくて」
抱きしめる力を少しだけ強くすると、それに応えるかのように、がぎゅっとしがみついてくる。
胸のあたりがじんわりと温かくなるのを感じた。
次第に柔らかなの感触が鮮明になってきて、恥ずかしくなって思わず体をそらしそうになった。
けれど、それではまた彼女を傷つけてしまう気がして、なんとか堪える。
体中の血が沸騰したような気分だ。
今自分はどんな顔をしているのだろう。
恥ずかしくて仕方がない。
「…私こそ、ごめん。青根くんに言えばよかったね、私の気持ち。察してもらうの、待ってるだけじゃダメだよね」
「……(ふるふる)」
俺が首を横に振ると、の目にたまった涙が、つぅっと静かに流れて行った。
それを見て、綺麗だな、なんてことを思ってしまう。
でももう涙なんか流させたくない。
もっとの気持ちを汲んであげられる男になりたい。
じっと見つめた先の瞳は、まだ少しだけゆらゆらと揺れている。
熱っぽい視線は、何を求めているのだろう。
こういう時はどうすればよいのだったか。
『いいか、青根。沈黙が訪れて、見つめ合う時間が5秒以上あったら、それがキスの合図だ!』
ふいに、二口の声が聞こえた気がした。
恋愛指南だなんだと時々口やかましく言っていたような気がする。
そんな言葉を思い出すということは、今がその時だということだろうか???
人気のないところとはいえ、ここは学校だ。
どこで誰が見てるか分からないし、初めての、ことなのに、こんな場所でいいのだろうか???
考えあぐねていると、ふいに下から引っ張られる感覚。
首の後ろに回されたの腕はひやりと冷たかった。
ぐっと顔と顔が近づいたと思った時には、唇に柔らかいものが触れていた。
音もなく静かに離れて行ったが、唇の熱は確かに感じた。
「……っ?!?!」
動揺する俺をよそには嬉しそうに微笑んでいる。
「奪っちゃった」
唇に人差し指を押し当てて、はいたずらっぽく笑っている。
瞬間、たまらない気持ちになる。
「……っ、」
「えっ」