第1章 プロローグ
僕は夢を見た。
夢の中のお父さんとお母さんは僕にとっても優しくて、僕は嬉しくなって二人の方へ駆け寄っていった。
二人は僕の頭を優しく撫でてくれた。
二人は僕のために美味しそうな料理を作ってくれた。
弁当も作ってくれた。
それを一緒に食べた。
たこさんウインナー、卵焼き、ぷちトマト。
可愛く盛り付けられた料理をお母さんが僕にあーんってしてくれた。
お父さんは面白いお話を沢山してくれて、肩車や高い高いをしてくれた。
保育園の帰り、一緒に帰った。
お風呂に入って、一緒に寝たんだ。
寝る前にお母さんが本を読んでくれた。
本を読み終わったお母さんは、僕のことをぎゅっと抱き締めて大好きだって言ってくれた。
ぜんぶぜんぶ夢だって、知ってたよ。
分かってたよ。
でも、なんで、
僕の目から溢れる水は止まらない。
夢の中の最後のお母さんは、悲しそうな目で、こう言っていた。
「貴方の瞳はいつも冷たいのね。」
それはきっと僕じゃなくて、僕の瞳に向けられた言の葉。