第1章 プロローグ
「見たところ外傷はないわね。」
「眠ってるだけだわ。」
なんだろう。
女の人の声が、聞こえる。
ぱち、と目を開けると心配そうな顔をした看護師さんが二人僕の顔を覗き込んでいた。
僕はびっくりして目を見開いてしまったけれど、看護師さんはそれについては触れないで、優しく話してくれた。
ここは、病院。
なんで?僕どうしたの?
目の前に大きな男の人が立って、点滴しようか、と僕の頭を撫でる。
なんだかよく分からないけど、病院だから大人しくしなきゃ。
僕は点滴を打たれていると、段々眠くなってきた。
ねむい。起きたばかりなのに、おかしいな。
あれ、段々意識、が……。
――――――――――――――
次に目を覚ました時には僕の髪の毛は薄くなっていた。
薄い水色、白に近い。目も深い青だ。
おかしいな、なんでだろう。
ここはどこ?
お父さんとお母さんも、いない。
なんで、なんで。
扉の向こうから声が聞こえた。
「上手くいきましたね。」
「嗚呼、今は眠っているがじきに目を覚ますだろう。なんにしろ、これで私たちのプロジェクトは成功したんだ。」
「そうですね。これで、あの子供はもう人間じゃない。」
「嗚呼、あとは記憶を消すだけ。我々の言いなりになる人形に作り変えるのだ。」
子供って僕のこと?
人形にするって何?
記憶消されちゃうの?
やだ、やだよ。
そんなの、嫌だ!
僕は腕に刺してあった点滴の針を乱暴に抜き取ると、一目散にドアを開けて走り出した。
嫌だ嫌だ嫌だ。
どこに行けばいいのか分からない。
後ろから追いかけてくる悪い人たちがお母さんをお父さんを殺した人に見えて……。
殺した、ひと……?
おかしいな、僕、殺した人なんか見てない筈なのに。
お母さんとお父さんは、殺されたの?
眠っているだけじゃなかったの?
じゃあ、あの台所にあった液体は、何……?
あれは、何?
僕は発狂した。
あとのことは覚えていない。