第1章 覚醒
「……あれ?」
目が覚めると、私は見知らぬ建物の路地裏に居た。薄暗くてちょっときつめの匂いがする、そんなところ。傍らには、野良猫が寄り添って眠っていた。夜風から守ってくれていたのだろうか、彼らにお礼をいうとその路地裏の外から抜け出そうと足を踏み出す。
その途中で、ふと疑問に思う。
どうして私はここで眠っていたのだろう。そもそも私は今まで、どこで何をしていたのだろう?
(思い出せない…、なんで?)
この路地裏の外に出れば、きっと何かわかるのだろうか……、そう思い私はその光の差すほうへ歩き出した。
「―――っ、まぶし…」
その路地裏から出るとそこはまるで別世界だった。
「え…?」
ジリジリと鳴く蝉。それはいいのだが、周りの光景が信じられないものばかりだった。あまりにも人が多く、こんな場所通れたもんじゃない。しかし、その人ごみの中を歩く人間たちは平気な顔をしてその流れに混じって平然と歩いていく。また、その人間たちの格好も奇妙だ。
それに彼らの歩く道もおかしい。小さな石が敷き詰められたものを固めた灰色の道。そのはしっこに白い線が引かれている。
そしてその道を物凄いスピードで走る物体。よく見ると人間が操っているようだ。
「なっ、何なんだ此処は…。人間の住む世界? …にしては、少し変……?」
私の知っている町はこんな姿ではなったはずだ。一体、自分があの路地裏で眠っている間に何が起こってしまったのだろう。
思考をめぐらせながらふらふらと歩いていると、
――――ゾッ…
「!?」
何やら異質な気配を感じた。
何だろう、この感じは…?禍々しくてとても、見ていられない。
「さすがは審神者―――力がある限り、どんなに隠していても我々の気配は察知できるのだな」
「――えっ」
たった今通り過ぎた通行人が、ぼそっと呟いた。振り返った瞬間、周りが赤色に染まる。私の顔にその雫がぴしゃり、と降りかかった。
「「キャアアアア―――ッ!!!」」
周りの人の目が在るにもかかわらず、『それ』はお構いなしに攻撃をしかけた。巻き添えを食らった見知らぬ町の人間たちは真っ赤に染まってピクリとも動かない。
「なっ、なんてことを…!」
「……次は外さん、覚悟をしろ、審神者…!」
「っ…」
通行人はすでに人の姿をしていなかった。