第2章 序章
「成る程ねぇ…。その魔族がまた襲って来る可能性も有り得るか―――よし!お前達三人に縁下の隊を行かせよう。その方が安心だ」
「あ、アザっす!」
「……ありがとうございます、光栄です」
「じゃ、城付近の魔物討伐、よろしく頼むよ」
********
そうして冬樹たちは兵士長・縁下力とその兵と共に魔物が現れるという知らせのあった場所へと向かうことにした。
「いやぁ、本当に見つかってよかったよ。このおふれは一応俺たちにも出されてはいたんだけど、あのサクラノ村の襲撃があったせいで誰も引き受けなくてね」
「それで国民にもおふれってことっすか…」
「な、な!?いいモン拾って来ただろ影山!」
「……よくやった」
「上司か」
日向たちが会話をする中、冬樹は黙ったままだった。会話に入ることなく彼女は考え事をしていたのだった。もしその討伐対象である魔物が、『イブ』の魂とやらをねらっている者たちだったら、どう戦おうか―――冬樹は心配していたのだった。
「……おっと、魔物が出現したっていう場所は確かここらへんかな」
「えっ、こんな広いところでですかっ?」
「うーん、そうなんだけど油断は禁物ってところかな? …全員、配置につけ!いつ来るかわからないぞ!」
縁下が兵たちに呼びかける。その呼びかけとともに、日向と影山も武器を構えた。しかし、冬樹は武器を構えず辺りをキョロキョロと見渡している。
「おい、冬樹!武器を構えないとやられるぞ」
「そんなのわかってる。―――でも、なんだか変なんだよ」
「……変?」
魔物が現れた場所に到着してから感じていた違和感。彼女はそれをずっと気にしていた。
「こんな何もない平地に、魔物なんておかしいと思わない?隠れる場所もないし、森からもすごく離れてる。わざわざ魔物が森から出てきて人を襲うだなんて、よほどのスタミナの持ち主でないと至難の業だよ」
「ハァ?」
突然の冬樹の発言に影山は「何言ってんだコイツ」といった顔をする。それを無視して冬樹は疑問に思っていることを兵士長に問う。
「……縁下さん、魔物が出たという知らせをしたのは誰だったのか覚えていますか?」
「えっ!?えーと、確か一般の国民が知らせにきたはずだけど」
「そうですか。……成る程、つまりこの魔物が現れたという報告は…」
――――私をここへ連れてくるための、罠だ